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小林一茶と耳鳴り

 夜の霜 耳はしんしん 蝉の声  

 これは俳人小林一茶の句です。
 一茶は50歳を過ぎて結婚し、子供たちは早世しやがて妻も病死してしまいます。
このような境遇に加え一茶は血圧が高く、めまいと難聴を併発していたとされています。 
冬の静けさのなかにありながら、まさに蝉の「ジージー」といったやかましい音が耳元に響きわたる、一茶の苦しみと孤独がこの句に表れています。
 耳鼻科診療において耳鳴りはしばしば遭遇する疾患です。しかし、「命には別状ない」「年のせい」などと片付けられることがほとんどです。一般に循環改善剤、末梢神経修復剤などの内服治療が行われますが、効果はほとんどありません。

 そもそも耳鳴りは、誰にでもあるものです。通常はきわめて小さいため他の音にマスキングされ自覚していません。 一口に耳鳴りといっても、一時的で気にする必要のないものから騒音暴露、メニエール病などの内耳疾患、聴神経腫瘍の初発症状、脳梗塞・脳出血の前兆までさまざまです。蝸牛神経(聴神経)の異常興奮がその病態です。さらにやっかいなのは、内耳性と中枢性(頭鳴り)耳鳴りの鑑別が困難であることです。患者さんは耳鳴りと訴えていてもしばしば頭鳴りであることが少なくありません。  また、顎関節症と耳鳴りの関係については古くからその関係が指摘されています。 顎関節の上にリンパ液に包まれた内耳が存在しており、機械的な刺激を持続して受けるため、両者は密接な関係にあります。  顎関節症は、「顎関節痛、雑音および異常顎運動を単独または併発して経過する非感染性、顕著な炎症病態を欠くもの」につけられた名称で、その原因については咬合異常、筋性、神経性、心因性など多くの説があげられています。
 一般に、耳鳴りの治療はさまざまですが、軽快することはきわめて稀です。最近は、耳鳴り自体は治まらないので「気にしないように」との観点から精神心理療法が行われたり、他の音で耳鳴り自体を遮蔽する療法まで登場しています。
 さて、あなたの耳鳴りは?

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小児病院勤務医師。

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